スノーモト乗りは ALL DAY の登場で2度目の大きなターニングポイントを迎えたんじゃないかという話
どうも、2シーズンにわたり ALL DAY に乗っている管理人です。オールラウンドボードとして発売されたので購入した人も多いようですね。昨シーズンは実際にゲレンデで ALL DAY の方によく会いました。
一気にユーザーを獲得した ALL DAY ですが、風の噂やネットの書き込みを見て個人的に思うことがありこのエントリを書くことにしました。
とその前に、まずスノーモト乗りに訪れた最初のターニングポイントの話をしなければなりません。
(個人的な体験に基づく非常に長く構成も目茶苦茶で低レベルな話なので読まれる方は覚悟して読んでください。少し技術的な話もありますので「お前がいうな」と思う方は不快になるだけですのでタブを閉じることをおすすめします。)
1度目のターニングポイント
スノーモト乗りの最初のターニングポイントはスノーモト初のワイドボード『2011 Evolution Wide』だと思います。(画像はSSUGから拝借)
前後対象のナローボードしか無かったスノーモトにスノースクートのような前後非対称のボードの登場は賛否両論を巻き起こしました。
ボクも始めはスノーモトらしさがなくなった気がして少し寂しく思いましたが、新型ボードということもあり密かに試乗するのを楽しみにしていました。そしてその機会はすぐに訪れます。
全然乗れなかった
それまでスノースクートの様な前後非対称ボードで乗った経験はほとんど無かったのですが、それなりに乗れるだろうと思っていました。
しかし結果は惨敗、車体を傾けてターンすることが出来ないのです。もちろん楽しむ余裕なんてありません。
それはボクに限った話ではなく、多くのスノーモトユーザーが口を揃えて「曲がらない」と言っていました。
自分の下手さにショックを受けた
ボクは 2011 Evo Wide に乗るまでナローボードに乗っていたわけですが、自分の中ではスノーモトを乗りこなしていると思っていました。しかしその自信は完全に打ち砕かれます。このボードに試乗した日に、もう一度ナローボードの乗り方を基本から見直そうと決めました。
世間では曲がらないボードという評価が下ったが…
当時スノーモトのユーザーの間では「2011 Evo Wide は曲がらない」という認識が広まっていました。しかしその状況は徐々に変わっていきます。
なぜならこのボードはスノーモト乗りにとって幅広いボードでしたが、スノースクートの一般的なボードに近い幅であり単体で見れば特別幅広なボードでは無かったからです。
多くのスノーモト乗りは始めこそ苦戦したものの徐々にそのボード幅に慣れ、「気持ちよくターン出来る」「パウダーも滑れる」など好評価に変わっていきました。デッキの位置がスノースクートより高めなのも扱いやすい要因だったと思います。
その後、改良モデルとして若干シェイプを細くしサイドカーブをつけた新型ボードが出ましたが、ボクを含めいまだにこのボードを好んで使っているユーザーは多くベ、テランユーザーに根強い人気のある名ボードとして認知されるようになりました。
アプローチの違い
多くのスノーモト乗りが 2011 Evo Wide を乗りこなせるようになったわけですが、乗りこなすまでの過程に違いがあったように思います。大別すると…
- a) 荷重の掛け方など乗り方を見直して乗りこなした
- b) 乗れないながらも徐々に慣れて乗れるようになった
一見似ているようですがこの2つはかなり違います。
1つめのターニングポイントはなんとか乗り越えた
ワイドボードを買う前にナローボードの乗り方を根本的に見直さなければと考えました。ポイントはただ一つ、荷重です。
従来の幅の狭いナローボードは車体を倒しやすくターンが容易で誰でも乗れるというメリットがあります。おかげで多くのユーザーがすぐにスノーモトを楽しむことが出来ました。しかしターンが容易ということは大きな荷重が必要ではないということです。その結果、ワイドボードの能力を引き出せていないユーザーを生み出してしまったように思います。
ボクは 2011 Evo Wide を買う前にナローボードでの荷重の掛け方を見直し練習を重ね(前述のa)、乗り換えた1本目からそれなりに乗ることが出来ました。(一部の人しか知らないと思いますが強制的に荷重を意識させるための「スノーモト体操」を考案したのもこの時です)
前述の(b)の方法で乗れるようになった人が、エントリタイトルに書いた「2度目のターニングポイント」で躓いたのではないかとボクは考えました。
2度目のターニングポイントとなった ALL DAY
冒頭に書いたように、ALL DAY について風の噂やネット上で低評価を付けている人をちらほら見かけました。
ボクの予想では前述の方法(b)で乗れるようになった人が低い評価をしているように思います。
その理由は前述の方法(b)で乗れるようになった人は荷重の掛け方を理解したのではなく慣れで覚えただけなので、さらに幅広くなった ALL DAY では慣れではカバー出来なくなったと予想されるからです。
ボクが初めて ALL DAY に乗った時は普通に滑れました。この「普通に滑れた」という感覚は初代ワイドボードの時に練習した賜物なのだと思います。しかしボクにも試練は訪れます…。(“ALL DAY は自分の弱点がよく分かる”で説明します)
スノーモト歴の長さ=経験値の高さではない
そろそろ10年?となるボクのスノーモト歴ですが、10年ほどの間にユーザー間で滑りの差が広がってきているように感じています。
ちなみにボクのことをよく知らない人はこんな偉そうな言っているので「運動神経抜群でシーズン30日くらい滑走しているような雪焼けしたガタイの良い山男」を想像するかもしれませんが、実態は…
- シーズン滑走日数は約10日(試乗会の手伝いも含めているので実際はもっと少なかった)
- 学生時代の体育の成績はいつも3
- 重度の腰痛持ち
- グラフィックデザイナーのため座り仕事&田舎住まいで移動は常に車という慢性的な運動不足
- 筋力も持久力も人並み以下のやせっぽち
- バイクも自転車も乗らない
これが偽りのないボクです(笑)
こんなボクがスノーモトを長く続けてこられた理由は…
- 重力に逆らわない下り系スポーツ
- 見た目より体への負担が少ない
- レジャーの範囲内であれば特別な身体能力がなくても高い意識を持つことでそれなりの事が出来る
この3つだと思います。特に3つ目が重要なポイントです。
滑走日数が少ないので自分なりに集中してストイックにシーズンを重ねてきました。もちろん仲間と一緒に滑ることも大好きなので楽しんで滑っています。(一緒に遊んでくれる皆さんに感謝)
そのおかげで基本的なグランドトリックやバースピンのようなハードトリックもある程度のレベルで習得することが出来ました。
個人的な価値観を押し付けるつもりはありませんが、やれることが増えるとより楽しく滑れると思っています。
長くスノーモトに乗っていても、いろんな大会に出場しても、自己分析やフィードバックが出来ていなければそれを経験とは言えません。
新型ボード=乗りやすい?
毎シーズン発売される新ボード、期待に胸が膨らみますね。ALL DAY もメーカの謳い文句に『オールラウンドボード』とあったので特に期待したユーザーも多かったと思います。ですがいつ誰が『オールラウンドボード=誰でも乗れるボード』と言ったのでしょうか?
『オールラウンドに使うにはオールラウンドな経験値』が必要なはずです。基本的なライディング技術、パウダーでの滑走技術など必要な要素はいくつもあります。ボードに自分の能力をカバーさせるのではなく、ボードの能力を自分が引き出す様なライディングが出来るかでボードに対する評価は大きく変わります。
個人的には道具が補助してくれるのは2割程かな?過度な期待は冷静な判断を失わせると思います。
ALL DAY は自分の弱点がよく分かる
スノーモトのナローボードの様な幅の狭い細いボードは誰でも簡単に扱えるので「滑りの癖」が影響することはさほどありません。
しかしボード幅が広がってくるとターン時に左右の振り幅が大きくなるのでナローボードでは気がつかなかった悪い癖が ALL DAY では顕著になります。
人間は左右対称ではありませんがスノーモトは左右対称の乗り物です。体の左右のバランスの悪さを見逃してはくれません。
少し前に「ボクにも試練が訪れる」と書きましたが、ALL DAY に乗るようになってカービングの時にフロントボードを擦るようにゆっくり転ぶことが多くなりました。
始めはフロントボードのセッティングのせいかと思いましたが、転倒を繰り返すうち右ターン時に深くバンクすると転んでいることに気がつきました。左ターンの時はしっかり立ち上がることが出来るのでやはり右ターンに何らかの癖があったようです。
実は右ターンに違和感があることは前々から気付いていました。ナローボードの時も 2011 Evo Wide の時も右ターンが苦手だったのですが、それ程苦になるような場面がなかったので矯正を先延ばしにしていたんです。しかし オールラウンドボードである ALL DAY に乗るようになってもう無視出来なくなりました。
このエントリを書いている時は 2011 Evo Wide に乗り換えてカービング時のボードの動きや荷重の掛け方などを見直しています。今のところ良い結果が出ているのでこのまましっかり体が覚えるまで練習を続けようと思います。
乗り方はどれでも同じ
ALL DAY も ADVANCE も EDGE も基本的に乗り方は同じ。メーカーもボード設計者もそのようにアナウンスしていますしボクもそう思います。
乗り方が変わるのは雪質や状態、コースの形状や斜度です。その場合でも重心の位置は変化させずにフロントボードをプッシュしたりリアボードを踏み込みといった動作で調整するような動作が加わるだけで大きく変わる訳ではないと思います。
井上さんが制作されたこの動画を見て基本動作を見直してはどうでしょうか。
と、自分で貼っておいてなんだけどこれ本当に勉強になるな(笑)。思わず繰り返して見てしまった。
自分に素直に道具に対しても素直になろう
このエントリで一番言いたいのはこれです。
自分と向き合い道具の特性を理解することでより高いレベルの滑りが出来るようになるのでないでしょうか。それは楽しみの幅が広がることにも繋がります。上級者の仲間と同じレベルで難しいコースを滑ることを想像してみてください。ボクは想像しただけでテンション上がります。
素直に向き合うとはどういうことか
最近ノーマルの ALL DAY では出来なかったバニーホップバースピンやマニュアルがだいぶ出来るようになりました。本当は「ALL DAY では出来ない」と決めつけていたんです。「やり辛い・向いていない」という根拠の無い言い訳で逃げていただけだったんでしょうね。
素直に向き合った結果、以前より幅広くなったハンドル、大きくなったフロントボードでも回せるようになったし、マニュアルで持ち上がらなかったフロントもスパッと上がるようになりました。
もう少し具体的な例をあげると、ボクはバースピンをしやすくするためにハンドルを短く切って使っていました。短くした理由は回したときにグリップが太ももに当たっていたからです。そうすれば回しやすくなるだろうと考え実際に回しやすくなりました。
しかし『不得手な部分を道具で補った』せいでバースピンをするための最適なフォームをつくらなくても出来るようになってしまうというデメリットが生まれたことに気がついていませんでした。それは ALL DAY ではじめてバニーホップバースピンを成功させた時に分かりました。幅のあるハンドルでも回せたことでバースピンに最適なフォームが自然と出来るようになっていたんです。
本来の正しいフォームを習得した上でハンドルを短く切るのと、ハンドルを短くしてやっと出来たバースピンとでは大きな違いがあります。前者は「出来ていることをよりやりやすくするため」、後者は「出来ないことを出来るようにするため」であって同じように見える結果でも習得したものが違います。
正しいフォームが出来ていれば、ハンドルが長かろうが借り物であろうがすぐに対応出来るのです。自分の技術不足を補う為にカスタマイズしまくったスノーモトで得たトリックやカービング技術は、本当の意味で習得した技術とは言えないなと痛感しました。
有意義なカスタマイズ
このエントリを我慢して読んでくれた方の中には「お前みたいにマジで乗ってねーし」「カスタマイズ批判かよ」という方もいるでしょう。
ボクはストイックに練習していると言いましたが別に大会に出場する為とかそういうつもりでやっている訳ではありません、単純に練習することが好きなだけです。なので大きな括りで言うとレジャー指向に分類されると思います。
ボクに限らず多くの人がレジャー目的でスノーモトに乗っているのは間違いないでしょう。自分の技量を知ってカスタマイズをすることは多くのスノーモト乗りにとってとても有意義な事です。そういう意味でゲレンデでなるべく苦労せずに楽しむための『自分の技量を補うためのカスタマイズ』は推奨されるべきだと思っています。
自分を知ることで道具に対する評価は変わる
道具を評価するというのは難しいです。軽自動車しか運転したことのない人がF1マシンを運転して「乗り辛いダメな車」と言っても誰もそれを「評価」とは呼ばないでしょう。それはただの「感想」です。「自分は今どのレベルにいるのか」を知ることで道具に対する評価が変わるように思います。自己評価が出来ることで「カスタマイズ」の意味合いも当然変わってきます。
さいごに
結局何が言いたいんだといわれても読んで感じて欲しいとしかいえません(笑)。
ボクは普段からこんな面倒臭いことを考えて滑っているわけではありませんし、道具の批評やカスタマイズを一方的に否定している訳でもありません。
ただネット社会において情報は正誤にかかわらず簡単に伝播してしまいます。多くの人に自分の意見を向けるということはそれなりに責任が伴うと思います。
今回は道具を批評をする前に一呼吸置いて考えて欲しいという思いを込めてこんな説教のような教訓のような回りくどい文章になってしまいました。スノーモトに対するボクの熱い想いだと受け取ってくれたらありがたいです。
ALL DAY は自分のライディングに素直に答えてくれる『オールラウンドボード』です。ALL DAY が気に入らなくて手放そうと思っている方はもうちょっと頑張って乗ってみませんか?きっと自身のライディングを次のステージに引き上げるきっかけが掴めるはずです。
それをボク自身が証明出来ていないのが口惜しいですが、いつか思い描く滑りを表現出来るように乗りこなします!